注目情報|Hot Topics
- 2022.10.08雑誌論文|Journal papers小脳右半球のcrus-Iとcrus-IIはそれぞれ言語理解における文法処理と意味処理に関与している
本領域B02人類進化班公募班代表である中谷裕教(東海大学情報通信学部)らによる共著論文「小脳右半球のcrus-Iとcrus-IIはそれぞれ言語理解における文法処理と意味処理に関与している」が学術誌The Cerebellumにオンライン速報版で公開されました。
言語はヒトの知性を特徴付ける高次認知機能の一つです。ブローカ野やウェルニッケ野に代表されるように大脳皮質の左半球が言語機能に関与していることは従来から知られていました。一方、脳機能イメージングの技術が発達して言語機能に関わる脳活動を計測できるようになると、小脳の右外側部も言語機能に関連して活動を示すことが知られるようになりました。しかし、小脳の代表的な機能は身体の制御などの運動機能であると考えられており、言語機能における役割は明らかになっていませんでした。
日本語を母国語とする28人に対して日本語の短文を提示し、その時の脳活動を機能的磁気共鳴画像法を用いて計測しました。実験ではまず「太郎は花子が試験に合格したと聞いた」のような埋め込み構造のある文を提示して、埋め込みの深さと脳活動の関係を評価しました。文法処理の責任部位として大脳皮質左半球にあるブローカ野が有名ですが、ブローカ野だけでなく小脳右外側部にあるCrus-Iという部位が埋め込みの深さに対応した脳活動を示しました(図1)。またブローカ野とCrus-Iの脳活動は同期しており、これらの部位が連携して文法処理を行っていることが分かりました。
次に、並び替えがなく意味が通るもの、文節レベルで並び替えて意味がなんとなく推測できるもの、単語レベルで並び替えて意味が理解できないものの3種類の短文を提示して、並び替えのレベルと脳活動の関係を評価しました。文法処理には大脳皮質左半球にある側頭葉前部や角回が知られていますが、これらの領域だけでなく小脳右外側部にあるCrus-IIという部位が並び替えのレベルに対応した脳活動を示しました(図2)。また側頭葉前部や角回とCrus-IIの脳活動は同期しており、これらの部位が連携して意味処理を行っていることが分かりました。
小脳の外側部はヒトの進化の過程において最近数百万年で急激に大きくなったことが知られています。この領域が言語機能に関与しているという本研究成果は、言語の起源と進化を考える上で重要な視点を提供すると期待されます。
- 2022.01.31雑誌論文|Journal papers注意欠如多動症(ADHD)児の言語ネットワーク発達に関与するDNAメチル化
本領域B03認知発達班公募班代表である藤澤隆史准教授(福井大学子どものこころの発達研究センター)らによる共著論文Association of epigenetic differences screened in a few cases of monozygotic twins discordant for attention-deficit hyperactivity disorder with brain structures「ADHD不一致例によるエピジェネティックな差異と脳構造の関連性」が欧文科学雑誌Frontiers in Neuroscienceに掲載されました。
<概要>
注意欠如多動症(ADHD)は、年齢あるいは発達に不釣り合いな不注意、衝動性、多動性等を特徴とする発達障害の一つですが、その病態の一つとして、言語的なワーキングメモリの小ささが指摘されており、社会的な活動や学校生活への適応に困難をきたすことが知られてきました。しかしながらその分子神経基盤についてはほとんど明らかになっていません。本研究では、ADHDの発症に関与する脳構造の変異とDNAメチル化の差異との関係を検討するために、2組の一卵性双生児ADHD不一致例により、ADHD発症に関与するDNAメチル化候補部位を同定し、これらの候補について症例対照研究により再現を試みました(ADHD群18名、対照群62名)。また、有意差が認められた部位のメチル化率について、症例対照間で有意差が観察された局所的な脳構造変化の度合いとの関連性についても検討しました。その結果、一卵性双生児ADHD不一致例と症例対照群に共通してSorCS2遺伝子の一部の領域において有意にメチル化率が上昇していることが確認されました。また脳構造では、ADHD群では対照群に比べ中心前回と眼窩前頭皮質における灰白質容積が有意に減少しており、この容積減少はSorCS2メチル化と正の相関があることが観察されました。さらに、ADHD児で減少していた脳領域は、それぞれ言語処理やワーキングメモリ、感情制御に関与していることも明らかとなりました。これらの結果から、SorCS2遺伝子のメチル化は、前頭葉における脳容積減少を介してADHD児における適応困難を引き起こしており、その背景に言語的なワーキングメモリや感情制御の機能不全がある可能性が示唆されます。
論文タイトル:Association of epigenetic differences screened in a few cases of monozygotic twins discordant for attention-deficit hyperactivity disorder with brain structures.
著者:*Fujisawa TX, Nishitani N, Makita K, Yao A, Takiguchi S, Hamamura S, Shimada K, Okazawa H, Matsuzaki H, *Tomoda A.
掲載誌:Frontiers in Neuroscience DOI:10.3389/fnins.2021.799761
- 2021.09.10雑誌論文|Journal papersラットの観察学習には内側前頭前野が選択的に関わっている
本領域B01行動生物班公募班代表である櫻井芳雄(同志社大学脳科学研究科)らによる共著論文 Medial prefrontal cortex stimulation disrupts observational learning in Barnes maze in rats(ラットのバーンズ迷路内の観察学習は内側前頭前野の刺激で妨害される)が科学誌Cognitive Neurodynamicsに掲載されました。
<概要>
他個体の目標指向性行動を観察することで同じ目標を目指す行動を効率化する観察学習(observational learning)は、意図共有の下位機能と考えられる。観察学習についてのサルやヒトを扱った行動実験はこれまでに多く報告されているが、その神経メカニズムについてはほとんど解明されていない。そこで本研究は、すでに開発したげっ歯類用の観察学習課題(Yamada & Sakurai, 2018)を活用し、そこに特定のタイミングで神経活動を攪乱できる局所的電気刺激を導入することで、ラットの観察学習における内側前頭前野(medial prefrontal cortex)の役割を調べた。この観察学習課題では、観察対象となるラット(モデルラット)がBarnes迷路内の目標箱へ逃避行動を示す間、それを観察することが可能であったラット(オブザーバーラット)は、その後モデルラットよりも有意に短い潜時で目標箱へ逃避することがわかっており、それが視覚による観察に依存していることもわかっている(Yamada & Sakurai, 2018)。しかし本研究では、観察可能な時間帯に内側前頭前野に電気刺激を受けたオブザーバーラットは(図左上)、そのような逃避潜時の短縮を示さず(図a)、すなわち観察学習ができなかった。一方、同様の電気刺激を背側海馬(dorsal hippocampus)に受けたオブザーバーラットと電極が内側前頭前野に入っているだけのオブザーバーラットは、共にモデルラットよりも有意に短い逃避潜時を示し(図bc)、観察学習ができた。また内側前頭前野に電気刺激を受けたモデルラットは、逃避潜時の短縮を示さなかった。これらの結果から、意図共有の下位機能としての観察学習に内側前頭前野が選択的に関わっていることが示唆された。
<図>
論文:Yamada, M. and Sakurai, Y. (2021) Medial prefrontal cortex stimulation disrupts observational learning in Barnes maze in rats.
掲載誌:Cognitive Neurodynamics, In press (published online). DOI: 10.1007/s11571-021-09715-9(
- 2021.09.07雑誌論文|Journal papersオカメインコは音楽のメロディにシンクロして歌をうたう能力を持つ
本領域B01行動生物班の関義正教授(愛知大学文学部)の論文が米国の学術誌PLOS ONE(プロスワン)にて2021年9月4日15時(日本標準時)に公開されました。https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0256613
<概要>
愛鳥家の間では、オカメインコ(図1)の一部がヒトの口笛で奏でられる音楽を模倣し、また演奏の途中でそれに加わり、見事に同調してうたうことが話題になることがありました。このたび、関教授は、オカメインコがそのように振る舞うことが事実であることを実験によって確認し、発表しました。実験においては、まずオカメインコをヒナの時期から育て、その間に楽曲のメロディを奏でて聞かせ、オカメインコがそれを模倣するようにしました。続いて、そのメロディをうまく模倣するようになったトリに対して、あらかじめ録音しておいたメロディを聞かせることにしました。そして、トリが歌をうたっている間にメロディを流すと、トリは自分のうたっている歌のタイミングを聞こえてくるメロディのタイミングに合わせてうたいました(図2,3)。また、トリが歌をうたっていないときにメロディを流すと、途中からそれに加わってうたい始めることが度々観測されました(図4)。それらのデータを分析することにより、オカメインコが自発的・能動的に聞こえてくるメロディに合わせてうたっていたことが確認されました。これは、ヒト以外の動物が音楽のメロディに同調してうたうことを示した初の学術報告となります。
人間社会においては、複数人で声を揃え、同じ旋律で歌をうたう行動は広く一般に見られます。本研究により、ヒト以外の動物を用いた比較研究によって、このような行動の起源や機能を探るための道が開かれたことになります。また、このことは、人間特有の文化的表現とみなされている音楽の研究を進めるための比較対象となり得る動物が見つかったことを意味します。これにより、私たちがなぜ音楽を楽しむのか、という疑問の答えを得るために、これまでとは異なる生物学的視点からの研究が可能になります。さらに、高度に文化的でヒトに特有と思われる行動とそれを可能にする高度な認知能力(図5)が、全く異なる進化を経てきた動物と共有されているというこの事実は、(動物を含む)自分たちとは異なる他者と共生し、多様性を認めることの重要性についての理解を深めるための強力な事例となります。
<図1>
<図2>
<図3>
<図4>
<図5>
- 2021.07.16雑誌論文|Journal papersThe contingency symmetry bias (affirming the consequent fallacy) as a prerequisite for word learning
B03班認知発達班の今井むつみ先生(慶応義塾大学環境情報学部 教授)の対称性バイアスに関する論文がCognitionで採択されました。詳しくはこちらをご覧ください。
<概要>
ヒトの非論理的だが効率のよい思考バイアスの一つに、本来一方向でしか成り立たないA→Bの関係の学習から逆方向のB→Aを同時に推論してしまう「対称性バイアス」があると言われている。このバイアスは私たちの言語学習と深い関連をもつと考えられてきたが、言語学習に先行するのかなど、発達的・進化的起源は明らかではなかった。
そこで、本研究ではヒト乳児(8か月)とチンパンジーの種間比較実験を行った。実験では、動きA→対象物A・動きB→対象物Bを学習させた後、対象物A→動きAという逆のペアを提示した。もし、対称性バイアスを示すなら、動きと対象物との間の方向性を逆にしてもペアの組み合わせが変わった際に違反を検出し注視時間が長くなるはずである。この仮説を、非接触視線計測装置を用いて実験的に検証し、対称性バイアスがヒトで前言語期に現れること、チンパンジーに比べヒトではこのバイアスが強く現れることを明らかにした。この結果をふまえ、対称性バイアスが言語学習に必要な認知能力の1つである可能性を示した。
論文:Imai, M., Murai, C., Miyazaki, M., Okada, H & Tomonaga, M. (2021).
The contingency symmetry bias (affirming the consequent fallacy) as a prerequisite for word learning: A comparative study of pre-linguistic human infants and chimpanzees.
掲載誌: Cognition, 214: 104755.
DOI: 10.1016/j.cognition.2021.104755
- 2021.04.26雑誌論文|Journal papers齧歯類のメタ認知を担う機能的神経回路の解明
本領域B01行動生物班公募班代表である櫻井芳雄(同志社大学大学院脳科学研究科)らによる共著論文Contribution of non-sensory neurons in visual cortical areas to visually guided decisions in the rat(ラットの視覚誘導性意思決定における視覚皮質内非感覚性ニューロンの働き)が科学誌Current Biologyに掲載されました。
<概要>
齧歯類のメタ認知を調べるため、前年度までに知覚モニタリング課題(視覚刺激検出課題)を開発し、「見えたという意識」つまり視覚的メタ認知の有無によって、ラットが行動を選択できることをすでに報告した(Osako et al. 2018)。そこで今回、その視覚刺激検出課題を遂行中の神経細胞集団の活動を一次視覚野(V1)と後部頭頂皮質(PPC)から同時記録した(図1)。V1は視覚刺激が最初に到達する脳部位であり、PPCはそのV1から直接入力を受けている。同時記録した多数の神経細胞の活動を主成分分析(PCA)等の多様な方法で解析したところ、V1の視覚応答性細胞(sensory-neuron)が活動してもラットは光刺激を見逃すことがあった。また、V1とPPCに存在する視覚非応答性細胞(non-sensory neuron)が神経細胞集団の活動状態の変動(state fluctuation)に関わっており、V1におけるそのような活動状態の変動と刺激提示のタイミングが、視覚的メタ認知に基づく意思決定にバイアスをかけることがわかった(図2)。つまり視覚的メタ認知には特定の脳部位(責任部位)や神経回路が関わっているのではなく、視覚皮質の異なる部位にまたがる感覚性および非感覚性の神経細胞集団によるダイナミックな活動が関与していることが示唆された。
論文:Osako, Y., Ohnuki, T., Tanisumi, Y., Shiotani, K., Manabe, H., Sakurai, Y. and Hirokawa, J. (2021) Visually guided decisions driven by distinct population computations with non-sensory neurons in visual cortical areas.掲載誌:Current Biology, 31:1-13. DOI: https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.03.099
- 2021.02.05雑誌論文|Journal papersエコーチェンバーの生成メカニズム
本領域C01創発構成班計画班の研究である笹原和俊(東京工業大学環境・社会理工学院)らによる共著論文「社会的影響と社会的切断がエコーチェンバーの創発を加速する」が、科学雑誌Journal of Computational Social Scienceに掲載されました。
<概要>
ソーシャルメディアは、誰とでもつながり、誰もが情報にアクセスすることを容易にする一方で、社会的影響と社会的切断のメカニズムを促進し、「エコーチャンバー」と呼ばれる分断・偏極したクラスターに我々を導く危険性がある。本研究では、オンライン・ソーシャル・ネットワークにおける情報共有に関するシンプルなモデルを導入し、社会的影響と社会的切断の2つの要素を導入することで、エコーチャンバーがどのような条件で出現するのかを研究した。ソーシャルメディアの利用者は、情報共有によって露出した情報に基づいて、自分の意見や社会的なつながりを変化させることができる。モデルのダイナミクスは、社会的影響力と社会的切断が僅かであっても、ソーシャルネットワークは急速に分離された同質なコミュニティへと進化していくことを示した。これらの予測はTwitterの実証データと一致していた。我々の発見は、ソーシャルメディアのメカニズムを考えると、エコーチェンバーはある程度避けられないことを示唆しているが、可能な緩和戦略についてのヒントも提供する。
- 2021.02.05雑誌論文|Journal papers摩擦音[s]の構音におけるヒステリシスの発見
本領域B02人類進化班公募班代表である吉永司(豊橋技術科学大学)らによる共著論文Hysteresis of aeroacoustic sound generation in the articulation of [s]「[s]構音における空力音発生のヒステリシス」が米国科学雑誌Physics of Fluidsに掲載されました。
<概要>
摩擦音[s]は子音の一種であり、口腔内の舌と上顎の狭めから発生する気流の乱れにより発音することが知られています。また[s]構音時には、舌の先端を機敏に動かす必要があることから、子供は最後期に発音能力を学習・取得し、最も難しい音素の一種であることが知られています。
本研究では、この[s]の構音に着目し、舌の運動を模擬した口腔モデルと空力音響シミュレーションにより、舌運動時の乱流の発生・消散と音の発生タイミングを調べました。口腔モデル内の舌はreal-time MRIにより計測した舌の運動速度で上下させ、咽頭部からの一様な呼気流のもと、どのように音が発生するのかシミュレーションを行いました。シミュレーションとしては、圧縮性流体のナビエ・ストークス方程式を、乱流の細かな渦を解像する大規模計算格子状で計算し、運動する舌を埋め込み境界法により表現しました。
結果として、舌の挙上動作における発生音に比べて、舌の下降動作における発生音の方が大きく、この時、舌の上下動において気流と音の発生にヒステリシスが見られることが明らかとなりました。この結果は、[s]の構音における舌の上下動のタイミングと音の発生タイミングにずれがあることを示しており、[s]の構音動作に物理的な制約があることを示しています。我々のグループでは、この物理的制約が進化における構音の下位機能発達に関わっていると考えています。
論文タイトル:Hysteresis of aeroacoustic sound generation in the articulation of [s]
著者:Yoshinaga T., Nozaki K., and Iida A.
掲載誌:Physics of Fluids DOI:10.1063/5.0020312
- 2021.01.29雑誌論文|Journal papers2020年度研究成果 ーB01行動生物班公募班代表 狩野 文浩(京都大学高等研究院 特定准教授)ー
*Brooks, J., *Kano, F., Sato, Y., Yeow, H., Morimura, N., Nagasawa, M., Kikusui, T., Yamamoto, S. (2021). Divergent effects of oxytocin on eye contact in bonobos and chimpanzees. Psychoneuroendocrinology, 125, 105119. (co-first/correspondence)
*Kano, F., Sato, Y., & Yamanashi, Y. (in press). How chimpanzees look at movies: The “Art and Science” project in Kyoto City Zoo. Japanese Psychological Research.
*Hopper, L. M., Gulli, R. A., Howard, L. H., Kano, F., Krupenye, C., Ryan, A. M., & Paukner, A. (2020). The application of noninvasive, restraint-free eye-tracking methods for use with nonhuman primates. Behavior Research Methods. In press.
*Hepach, R., Vaish, A., Kano, F., Albiach-Serrano, A., Benziad, L., Call, J., & Tomasello, M. (2020). Chimpanzees' (Pan troglodytes) internal arousal remains elevated if they cannot themselves help a conspecific. Journal of Comparative Psychology. In press.
*Kano, F., Call, J., & *Krupenye, C. (2020). Primates Pass Dynamically Social Anticipatory-Looking False-Belief Tests. Trends in Cognitive Sciences, 24(10), 777-778. (co-correspondence) - 2021.01.29雑誌論文|Journal papers鳥類における他言語理解 ―ヒガラはシジュウカラの警戒声から天敵の姿をイメージできる ―
本領域B01行動生物班公募班代表の鈴木俊貴(京都大学 白眉センター 助教)による論文「Other species' alarm calls evoke a predator-specific search image in birds 鳥類における他言語理解―ヒガラはシジュウカラの警戒声から天敵の姿をイメージできる―」が米国生物学雑誌Current Biologyに掲載されました。
<概要>
多くの動物は天敵(捕食者など)に遭遇すると特別な鳴き声を発して警戒します。この鳴き声(警戒声)は、同種の仲間に危険を伝えるだけでなく、周囲に暮らす他種の動物にも警戒行動を促すことが知られています。本研究では、ヒガラが他種(シジュウカラ)の発するヘビ特異的な警戒声に反応する際、ヘビに似た物体への注意を特異的に高めることを実験的に確かめました。この結果は、ヒガラが他種の鳴き声から天敵のイメージを想起したことを示唆します。本研究は、発信者、受信者、指示対象の3項関係のコミュニケーションが、種を越えた「盗聴(eavesdropping)」の文脈においても生じることを明らかにした点で新規性があります。
京都大学プレスリリース https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2020-05-15
ジャーナル名:Current Biology
号・頁:30:2616-2620
DOI: 10.1016/j.cub.2020.04.062