研究成果|Research Output

注目情報|Hot Topics

  • 2021.01.29雑誌論文|Journal papers
    2020年度研究成果 ーA01言語理論公募班代表 那須川 訓也(東北学院大学 文学部 教授)ー
    1. Nasukawa, Kuniya (2020)

    Linearisation and stress assignment in Precedence-free Phonology: The case of English. Radical: A Journal of Phonology 1, 239–291. ISSN 2592-656X

    統語構造研究において、併合により構築される構造に、構成要素の前後関係は符号化されていないと一般的に考えられてきた。本研究では、諸音韻現象の分析をもとに、音韻構造も統語構造と同様の方法で構築され、且つ、前後関係にかかわる属性を有していないと考え、そのモデルのもと、音韻階層構造上の依存関係のみを対象として働く音声解釈原理の存在を仮定した。そして、英語の音韻データを分析しながらその原理のもとで働く音声具現化の仕組み(線形化規則と強勢付与規則)の妥当性について、言語能力と言語運用の相互作用の観点から論じた。その結果、音韻構造における回帰的階層構造のみならず、統語構造と音韻構造を統一的に具現化する仕組みの実在性の高さを示した。

    1. Nasukawa, Kuniya (2020)

    Lexicalising phonological structure in morphemes. Acta Linguistica Academica 67(1), 29–38. DOI: 10.1556/2062.2020.00003

    近年、心的レキシコン内の音韻特性を解明するための表示モデルが多数考案され、研究目的に合わせた表示モデルの選定が難しい状態となっている。そこで、本研究では、(i) 回帰的階層構造の有無、(ii) 構成素の前後関係特性の有無、(iii) 語彙化前・後段階における構造構築過程の仕組みの相違、といった観点から、存在する音韻表示モデルをA、B、C、Dという4種類に分類し、それぞれの特徴を明らかにした。その上で、Dである非時系列音韻モデル(Precedence-free Phonology)が、音韻現象および音声にかかわる言語表現生成過程を、形態・統語分析と同様の仕組みによって唯一分析できるモデルであることを明らかにした。

  • 2021.01.28雑誌論文|Journal papers
    求愛の「拒否」から「受容」へと行動を切り替える神経機構を発見The discovery of a neural switch that changes “rejection” to “acceptan

    本領域B01行動生物班公募班代表である上川内 あづさ(名古屋大学大学院理学研究科)らによる共著論文 A feedforward circuit regulates action selection of pre-mating courtship behavior in female Drosophila 「ショウジョウバエ雌の交尾前の性行動選択を制御するフィードフォワード神経回路」が、科学誌Current Biologyに掲載されました。

    <概要>

    多くの動物でメスは、オスの求愛アプローチに対して即座には交尾を許しません。メスは、求愛を拒否しつつ距離をとり、配偶相手の候補を充分に評価したのちに、交尾を受け入れるようになります。本研究では、ショウジョウバエのメスにおいて、この交尾前の拒否から受容に行動を転換する過程に必要な脳の神経回路を特定し、その機能を制御する分子群を明らかにしました。メスに受け入れてもらうためには、オスは何度拒否されても、あきらめずに求愛を持続することが大事ですが、今回発見した神経回路と制御分子群の働きからも、継続的な求愛の必要性が示されました。また、この神経機構は、我々、哺乳類のつがい形成に関わる脳の神経機構に類似していることも判明しました。ショウジョウバエを配偶行動の進化や本能行動の行動選択を理解するための研究モデルとして利用する、という本研究戦略を発展させることで、社会的絆形成などを担う普遍的な脳の分子神経基盤の解明にもつながると期待できます。

     

     

    論文:Hiroshi Ishimoto, Azusa Kamikouchi (2020)

    “A feedforward circuit regulates action selection of pre-mating courtship behavior in female Drosophila

    掲載誌: Current Biology, 30: 396-407.e4.

    DOI: https://doi.org/10.1016/j.cub.2019.11.065.

     

  • 2021.01.26雑誌論文|Journal papers
    ヒトとチンパンジーにおける二次元平面上への物の配置

    本領域B02人類進化班分担者である林美里(日本モンキーセンター)らによる共著論文Object sorting into a two-dimensional array in humans and chimpanzees「ヒトとチンパンジーにおける二次元平面上への物の配置」が科学雑誌Primatesに掲載されました。

    <概要>

    ヒトの認知発達を調べるために、2つの皿に物を配分するなどの課題がおこなわれてきました。7~9歳のチンパンジーと2~5歳のヒトの子どもを対象とした縦断的な対面場面において、比較認知発達の視点から物の配置課題をおこないました。二次元平面上(3×3のマス目のついた箱)に、色と形の異なる9個の積木を自由に配置する際に見られたパターンを記録しました。チンパンジーでは、あらかじめ手がかりが与えられた場合、24~43%の試行で、色や形が同じカテゴリーの物を行や列に分類して配置するパターンが見られました。最年少のヒトの子どもでは、9個の積木をすべてマス目に分配して配置することができませんでした。2歳を超えると、一対一対応ですべてのマス目に積木を配置できるようになりましたが、配置のパターンはランダムなままでした。その後、カテゴリーによる分類的な配置が増えていき、4歳で分類配置がもっとも多くなりました。それ以降、ヒトの子どもでは、ラテン方格のように行列が完全に均等になるような配置が見られるようになりました。この均等配置は4歳半以降に出現することから、分類配置よりも認知的に負荷が高いと考えられ、チンパンジーでは観察されませんでした。分類配置に使われた手がかりを調べると、年少のヒトの子どもでは形の手がかりがよく使われていましたが、チンパンジーと年長のヒトの子どもでは色と形の両方が手がかりとして使われていました。ヒトとチンパンジーが自発的なルールにもとづいて物を操作し、カテゴリー的な分類配置をおこなう基礎的な認知能力を共有していることが示唆されました。

    論文タイトル:Object sorting into a two-dimensional array in humans and chimpanzees.

    著者:Hayashi, M., & Takeshita, H.

    掲載誌:Primates, 62, 29-39 DOI: 10.1007/s10329-020-00850-1

     

  • 2021.01.26雑誌論文|Journal papers
    鳴禽類における音素時系列獲得における統計的学習

    ーB01 行動生物班 和多和宏(北海道大学 大学院理学研究院 生物科学部門 准教授)

    歌鳥は、学習によって時系列的に配列された離散的な音響要素(「音素」)を獲得します。これまでに音素の音響構造の学習は広く研究されてきましたが、音素時系列学習については十分な研究がなされてきいませんでした。我々はカナダ マクギル大学のSakata博士の研究グループとの共同研究によって、ジュウシマツ(Lonchura striata var. domestica)を用いて、歌発達過程における音素時系列学習がいかになされるのかを明らかにすべく研究を行いました。その結果、音素のレパートリー・出現率・音素間遷移などにおいて、若鳥が歌学習モデル中の配列統計確率に沿って有意に学習することが分かりました。例えば、音素配列中の「分岐点」(複数の種類の遷移が続く比較的複雑な配列)での音素間遷移の出現確率は、歌モデルと若鳥が獲得した歌の間で有意な相関を示しました。また若鳥にとって遺伝的に無関係な家系由来の歌をモデルとして聴かせても、同様の結果を得ました。さらに、歌モデルと若鳥が最終的に獲得した音素時系列配列における類似性の程度と忠実度は、歌モデル中の配列特性によって有意に予測されました。これらの結果は、発声学習には統計的学習の特徴が存在することを支持し、今後の発声時系列学習制御する神経メカニズムを理解につながることが期待できます。

    James LS, Sun H, Wada K, Sakata JT.

    Statistical learning for vocal sequence acquisition in a songbird.

    Scientific Reports 10:2248. 2020

    doi: 10.1038/s41598-020-58983-8.

     

  • 2021.01.26雑誌論文|Journal papers
    2020年度研究成果 ーB01行動生物班公募班代表 本間光一(帝京大学薬学部教授)-

    1.Blockade of muscarinic acetylcholine receptor by scopolamine impairs the memory formation of filial imprinting in domestic chicks (Gallus Gallus domesticus)

    Naoya Aoki, Toshiyuki Fujita, Chihiro Mori, Eiko Fujita, Shinji Yamaguchi, Toshiya Matsushima, Koichi J. Homma

    Behavioral Brain Research 2020;379:112291. DOI: 10.1016/j.bbr.2019.112291

    離巣性の鳥類に見られる親子刷り込みは、早期学習における記憶形成を研究する有効なモデル系の一つです。私たちは、就巣性鳥類の音声模倣学習の獲得初期課程にも刷り込み様記憶が潜んでおり、言語獲得に重要な役割を果たしていると考えています。今回、孵化直後のニワトリヒナを用いて、刷り込みに必須である大脳IMM領域にムスカリン系アセチルコリン受容体阻害剤(スコポラミン)を刷り込みトレーニング前に注入したところ、刷り込みが阻害されることを見出しました。また、IMM領域におけるムスカリン受容体のサブタイプ3の存在を、イムノブロッティングと免疫組織染色法によって示しました。これらのデータは、アセチルコリンがIMM領域のムスカリン受容体サブタイプ3に作用することで、刷り込み記憶の形成に関与することを示唆しています。

    2.The dorsal arcopallium of chicks displays the expression of orthologs of mammalian fear related serotonin receptor subfamily genes

    Toshiyuki Fujita, Naoya Aoki, Chihiro Mori, Eiko Fujita, Toshiya Matsushima, Koichi J Homma, Shinji Yamaguchi

    Scientific Reports 2020;10(1):21183. DOI: 10.1038/s41598-020-78247-9

    恐怖とは、脅威に対して防御行動を引き出す適応的な感情の一つです。哺乳類では、セロトニン受容体(5-HTR)が扁桃体基底外側部(BLA)の恐怖関連神経回路を調節することが知られています。一方、鳥類では、脳での5-HTRの発現分布はほとんど報告がなく、恐怖関連の行動に関与する5-HTRは不明でした。私たちは、哺乳類BLAで発現する7種類の5-HTR遺伝子群がすべて、孵化直後のニワトリヒナ大脳の背側弓外套で発現していることを見出しました。この結果から、背側弓外套のセロトニン作動性調節が、鳥類の恐怖関連行動の調節に重要な役割を果たしていることが考えられました。

  • 2021.01.11雑誌論文|Journal papers
    セキセイインコの協調運動における能動性は相手個体との”相性”の影響を受ける 

    -本領域B01行動生物班 関義正(愛知大学文学部教授)ー

    個体間で意図(目標)を共有しつつ運動系列を生じさせるためにセキセイインコを訓練し、2羽で交互のキーつつきを行なうことで双方が報酬を得られる課題を行わせた。個体間の関係性を調べるための選好実験および発声パターンの類似性評価実験との比較の結果、オスのトリは好みのメスがパートナーとなったときに、そうでないメスがパートナーとなったときと比べて、より反応時間の短い、すなわち、より能動的なキーつつき運動を見せることがわかった。
    「音の生成・同調時に見られる運動制御の精度および中枢神経系の活動を口笛と発声との間で比較」
    音声言語の生成機構の理解のために、発声および発声とはその生成機序が異なるものの発声とよく似た口笛による音の模倣の際に、または同調して音を生成する際に生じる脳の活動を計測した。その結果、音高の模倣は口笛において優れていたが、時間制御は発声において優れており、口笛の生成においては右脳の活動が高まり、発声においては左脳の活動が高まるという結果が得られた。

    雑誌論文|Journal papers
    1. Tomyta K, *Seki Y
    Effects of motor style on timing control and EEG waveforms in self-paced and synchronization tapping tasks
    Neuroscience Letters, Elsevier, 739, 135410, 査読有り, DOI:https://doi.org/10.1016/j.neulet.2020.135410
    2. *関義正
    オウムの仲間による新たな発声の獲得と創出,歴史言語学,第 9 号,93-105.
    学会発表|Presentation/Lecture
    1. 岸本励季・関義正
    A rhythmic turn-taking task in budgerigars (Melopsittacus undulatus): birds changed response strategy depending on the partner of the task
    日本動物心理学会 第80回大会, 口頭, 2020年11月21日, 鹿児島市, 鹿児島大学
    2. 富田健太・関義正
    運動様式の違いがリズム同調・生成課題にもたらす効果
    第2回共調的社会脳研究会, 口頭, 2020年11月01日, オンライン, オンライン
    3. 富田健太・関義正
    行動実験で検出不可ながらEEGでは検出可能な運動様式の違いにより生じる認知処理の差
    日本心理学会第84回大会, ポスター, 2020年09月08日, 東京, 東洋大学 白山キャンパス
     

  • 2020.12.25雑誌論文|Journal papers
    母子間インタラクション中のアイコンタクトで重要な自発的脳活動の解明

    本領域B03認知発達班公募班代表である藤澤隆史(福井大学子どものこころの発達研究センター)らによる共著論文Intrinsic brain activity associated with eye gaze during mother–child interaction「母子間インタラクション中の視線活動と関連する自発的脳活動」が英国科学雑誌Scientific Reportsに掲載されました。

    <概要>

    親子間のインタラクションは、子どもの将来の人間関係やメンタルヘルスに大きな影響を持つことが知られています。スムーズなインタラクションの成立において視線は重要な役割を果たしており、ヒトは乳幼児期から視線に対して高い感受性を有していることも知られてきました。また、視線は言語発達において重要な能力である他人の意図や精神状態を読む際に重要な役割を果たしているも指摘されており、特に視線と視線が合うこと「アイコンタクト」は、親子間で意図を共有し、出来事による文脈を共有する上で重要な役割を担っています。

    本研究では、母子間におけるアイコンタクトに関与する自発的脳活動を同定するために、39組の母親と子ども(6~11歳)を対象に、安静時機能的磁気共鳴画像(rs-fMRI)を用いて母子の脳画像解析を行いました。また、親子遊びを行っている際の母子間インタラクションの質を定量的に評価し、その時の母子間のアイコンタクトの頻度との関係を検討しました。その結果、視線を送る頻度とポジティブに関連していた自発的脳活動の領域は、子どもでは右前島部(AI)と左中前頭回、母親では前帯状皮質(ACC)と楔前部/楔部でしたが、その中でアイコンタクトの成立頻度とポジティブに関連していたのは、子どもでは右AI、母親ではACCでした。またアイコンタクトの成立頻度は、母子相互作用の質ともポジティブに関連していました。AIやACCは自発的脳活動における顕著性ネットワーク(Salience Network)のコア領域であり、顕著性ネットワークはその他の自発的脳活動ネットワークの効率的な働きを実現するための「切り替え」において重要な役割を担っていることが示唆されています。今回の結果は、AIやACCが効率的なアイコンタクトを成立するための主要な神経基盤であると考えられ、積極的な母子間インタラクションを確立する上で重要な役割を果たしていることが示唆されます。

    論文タイトル:Intrinsic brain activity associated with eye gaze during mother–child interaction.

    著者:Kuboshita, R., Fujisawa, T. X., Makita, K., Kasaba, R., Okazawa, H., & Tomoda, A. 

    掲載誌:Scientific Reports DOI:10.1038/s41598-020-76044-y

     

  • 2018.10.22雑誌論文|Journal papers
    小鳥の歌学習,日齢ではなく発声練習量が重要~自発的な発声練習の蓄積によって変化する神経活動依存的な遺伝子発現システム~

    本領域B01班研究分担者の和多和宏(北海道大学大学院理学研究院准教授)らによる共著論文 Vocal practice regulates singing activity–dependent genes underlying age-independent vocal learning in songbirds「小鳥の歌学習,日齢ではなく発声練習量が重要~自発的な発声練習の蓄積によって変化する神経活動依存的な遺伝子発現システム~」が米国のPLOS Biology誌に掲載されました(アメリカ東部時間2018年9月12日公開)。

    <要旨> 小鳥の音声発声学習(歌学習)に適した時期(学習臨界期)が,発声練習の経験量によって制御されていることを明らかにしました。
    ヒトの言語や小鳥の歌は,親など他個体の発声パターンをまねることで後天的に獲得され,これを発声学習といいます。発声学習には,学習が効率よく進む時期,すなわち学習臨界期(感受性期)があることが知られています。しかし,脳内で発声学習の臨界期が終了するメカニズムは殆どわかっていませんでした。
    小鳥の一種(鳴禽類(めいきんるい)スズメ亜目)のキンカチョウは,孵化後30~90日の約2カ月の間(学習臨界期)に1日数百回以上の発声練習を繰り返すことにより自分の歌を完成させ,完成した歌はその後一生涯維持されます。今回の研究ではこの学習臨界期が単に生まれてからの日数(日齢)で決まるのか,それとも発声練習行動の積み重ねにより制御されているのかを調べるため,学習臨界期中の自発的な発声練習を阻害する実験を行いました。その結果,発声練習を阻害した鳥は本来であれば学習ができなくなっているはずの成鳥になっても,幼鳥のような未熟な歌を出し,さらにその時点からでも発声学習ができることが明らかになりました。
    次に研究グループは,この発声経験による学習能力の変化が脳内でどのような分子メカニズムで制御されているのかを調べました。脳内で読みだされている遺伝子群を次世代シークエンスにより全ゲノムレベルで調べた結果,脳内の発声学習に関わる神経回路において,発声練習時にだけ読みだされ,発声練習の積み重ねにより読みだされにくくなっていく遺伝子の一群を発見しました。今回の結果は,発声練習行動がこれらの遺伝子の呼び出し調節を介して,学習臨界期を制御している可能性を示しています。

    著者:Shin Hayase, Hongdi Wang, Eri Ohgushi, Masahiko Kobayashi, Chihiro Mori, Haruhito Horita, Katsuhiko Mineta, Wan-chun Liu, Kazuhiro Wada

    掲載誌:PLOS Biology  https://doi.org/10.1371/journal.pbio.2006537

  • 2018.09.28雑誌論文|Journal papers
    Redefinition and sexual difference of contact calls in belugas (Delphinapterus leucas)

    本領域B01行動生物・公募班の研究者である森阪匡通(三重大学)らによる共著論文 Redefinition and sexual difference of contact calls in belugas (Delphinapterus leucas)「ベルーガのコンタクトコールの再定義と性差」が欧州の科学誌 Aquatic Mammals に掲載されました。

    <概要>群れを作るイルカの仲間は、光が乏しい海でお互いにばらばらにならないように、お互い音を出し合ってコミュニケーションをしています。森阪匡通准教授が率いる研究グループは、ベルーガにおいて、そのような鳴音(めいおん)を発見し、その詳細を研究してきました。今回の研究では、世界中の研究者によって報告されているベルーガの様々な鳴音のうち、お互いが鳴き交わしに用いている鳴音(コンタクトコール)の定義を拾い出し、さらに新たに、しまね海洋館アクアスで飼育されているベルーガ(写真)7頭の鳴音を調べることにより、ベルーガのコンタクトコールをCreaking Call(ギー音)としてすべてまとめて再定義しました。

    このギー音は、個体ごとに異なり、赤ちゃんの頃は決まっていないのですが、だんだん固定して自分 のタイプを持つ様になります。他個体がギー音を発したら、1秒以内に誰かがそれに返事をするというルールがありました。もし1秒以内に返事をもらえなかったら、自分でもう一度出すことも多くありました。

    さて、メスのベルーガや若いオスは自分のギー音しか出さないのです が、成熟したオスは他のオスと同じギー音を出すことがありました。どうして成熟オスのみ他のオスと同じギー音を出すことがあるのかはわかりませんが、ベルーガのオスの社会に関係していると考えられます。オスは成熟すると、生まれ育ったグループを出てオス同士で同盟を作ります。このときにオスのギー音が多様になるのかもしれません。今後はそのような社会関係とギー音の使い方の関係を調べていきたいと考えています。

    論文:Mishima Y1, Morisaka T2, Mishima Y3, Sunada T3, and Miyamoto Y4 (2018) Redefinition and sexual difference of contact calls in belugas (Delphinapterus leucas). Aquatic Mammals, 44: 538-554. Doi: 10.1578/AM.44.5.2018.538 現所属1 東京大学大気海洋研究所 2三重大学大学院生物資源学研究科附属鯨類研究センター(責任著者) 3島根県立しまね海洋館アクアス 4東京海洋大学学術研究院海洋資源エネルギー学部門

    三重大学大学院生物資源研究科 付属鯨類研究センター HP

  • 2018.02.23雑誌論文|Journal papers
    Nasalization by Nasalis larvatus: Larger noses audiovisually advertise conspecifics in proboscis mon

    本領域B01班分担研究者の香田啓貴助教(京都大学霊長類研究所)と中部大学松田一希准教授らによる共著論文 Nasalization by Nasalis larvatus: Larger noses audiovisually advertise conspecifics in proboscis monkeys「大きな鼻が男前?なぜテングザルの鼻は長いのか」が米国の科学誌 Science Adanvces(2018年2月22日午前4時オンライン)に掲載されました。

    <要旨> 動物の世界で派手なのは雄です.派手な装飾的な形態は,メスをめぐるオスの争い,すなわち性選択によって進化したと考えられており,形態や行動などの生物形質を急速に進化させる進化原理の一つです.テングザルは、名前の由来にもなっている天狗のように長く大きな鼻が特徴的なサルですがなぜこのような奇妙な形態進化をとげたのかは大きな謎でした.今回,テングザルの鼻サイズと様々な生物学的要素との関連性を調べ,霊長類の雄に特徴的な「男らしさ」の進化過程において,形態やコミュニケーション,社会生態学的な要素が相互作用し鼻の肥大化を加速させる進化シナリオについて提案しました.

    論文タイトル: Nasalization by Nasalis larvatus: Larger noses audiovisually advertise conspecifics in proboscis monkeys

    著者:H. Koda, T. Murai, A. Tuuga, B. Goossens, S. KSS. Nathan, D. J. Stark, D. A. R. Ramirez,J. C. M. Sha, I. Osman, R. Sipangkui, S. Seino, I. Matsuda

    掲載誌:Science Advances Doi:10.1126/sciadv.aaq0250

    研究情報詳細

    京都大学広報